オペラのお仕事を初めていただいたのは、東京の日生劇場にて2017年秋公演の「ルサルカ」作曲;ドヴォルザークでした。指揮者は、山田和樹さん、演出は宮城聰さんでした。
オペラは、演劇と違ってお客さんの雰囲気が違います。皆さん音楽が好きで、視覚的な要素よりも、聴覚つまり音にまず最初の興味がくるような方達が多いかと思います。
そこは演劇のお客さんと大きく違う部分で、それを踏まえてオペラの衣裳をデザインするときに、まずどのようにするのが面白いのかを考えました。
私はクラシックコンサートで、指揮者の方の動きを見るのがとても好きでした。
彼らの体から湧き出てくる何かと、演奏者全体の熱が呼応しあっていくのを見ることにとても興味深く思っていました。体の動きなどは、役者を見ているようで、全く退屈しないんです。指揮者にもよりますが。
山田和樹さんの指揮ぶりにも、とても魅入ってしまいました。あまりにも面白くて、劇場入りしてからのオケだけの練習で衣裳も何も関係ない時間にでも、ジーーーっと山田さんのオケに対する指示などを観客席から聞いておりましたし、練習風景も魅入っておりました。
結局、オペラで最大限に音楽を楽しめるようなビジュアルを見せるということを、一番に考えなくてはならないのですが、もちろん演出プランにも沿っていなくてはならないです。
そこをどのようにうまく料理するかが、本当に肝だなと思います。当時の私は、残念ながらどうやっていいのか全くわからず、演出プランと音楽を寄り添い合わせることがうまくできてなかったように思います。
ですので、劇場入りしてから、山田和樹さんのリハーサル風景を見ながら、表現力について、思いっきり落ち込みながら、どのようにすればいいのかを、オケリハーサル風景を見ながら、考え続けていました。山田さんの存在の仕方にヒントがあるように思えたからです。
衣裳とは全く関係ないような時間なんですが、強い信念のこもった表現力とか柔軟性など、なんか次のステップへと繋がるきっかけのようなものを、その時は
探していたんだと思います。
今現在は、この秋のベルリンのオペラの衣裳デザインを担当しています。その時の悔しかった思いが無駄ではなかったと言えるくらい、音楽そのもののパワーと演出プランの融合にエネルギーを注ぎました。まだまだこれから作り込んでゆき、融合をより深いものにしていくつもりです。衣裳がオペラの音楽に寄り添い、しかも相乗効果が感じられるように、予想を裏切り期待に応えるような存在となりたいです。ではでは今日はこの辺で。
Comentarios