アンティゴネの衣裳のプランは、まずはじめに設定がありまして、
法王庁の大きな壁の前でやること、
風がかなり吹くと言うこと、
床には水が引いてあること、
役者はその水面の床には、岩が枯山水の庭のように配置しており、基本的にその岩の上のみを演技エリアとすること、
盆踊りのシーンを印象的に生かせるようにすること、
壁を使い役者の体で影絵を作ること
などありました。
演出プランは、天界の天使達がアンティゴネというストーリーを演じることで、下界にいる多くの魂が癒され、盆踊りと共に浄化されてゆくというようなイメージでした。
そこで天界の天使たちつまり日本でいうところの三途の川を渡った後に、お世話をするために待っている人達?(果たしてそういう存在がいるのかどうかは記憶にはないのですが)とは何を着るのか?
私は、ここで半熟卵の法則というものを持ち出しました。笑 それは何かと言いますと、しっかり茹でた片茹で卵のようなものではなく、つまりド・ストライクに皆さんが思うようなビジュアルにはならない方が良いだろうと、そしてわざと半熟にした方が、どこか惹かれる、美味しさがあるというような存在がいいのではないかと思ったのです。つまり例えば、幽霊のような格好ですと、ドストライク過ぎて、観客もこれから始まるストーリーに先入観も少し入ってくる気がしてしまいます。そこで半熟程度のデザインというのを探ると、厳かな神様の分身のような感じではなく、天界の作業員のような少しニュートラルな存在の仕方があるのではないかと思いました。そこでボディスーツに体の筋肉のラインを入れたもので、ほんの少しコミカルな要素も含んでいるものにしました。役者さんの影を背面にある大きな壁に写すので、ボディスーツにした方が、面白いですし。盆踊りのために透けた生地の打掛を羽織り、透過性もあり、風になびき、うまい具合に使えました。
この半寿卵の法則、まだ20代の頃に写真家の荒木経惟さんのインタビューで読んで、自分の中に落とし込めるまで時間がかかっていたのですが、感覚的にはとてもピンと来ていて、自分の中では、プランナーとして、とても大事な感覚として持っているものの1つです。
Comments